マイナンバー制度の罰則~不正取得

最終更新日時:2016年(平成28年)8月10日

 マイナンバーは行政の効率化、公平公正な社会の実現などの理念を実現するための社会インフラですが、マイナンバーが不当に流出した場合、個人の権利利益が侵害されるとともに制度そのものに対する信用が失われることとなってしまいます。そのような事態を防ぐためマイナンバーを保有する者から不当に取得する行為に対して厳格に対処することが必要です。そこでこのページでは取得段階での罰則規定について学んでいきます。

収集(取得)段階での罰則規定

48~50条は主にマイナンバーを含む特定個人情報が不正に流出してしまうことを防ぐための条文でしたが、51条と52条は主にマイナンバーを保有する者から不当に取得する行為を、そして55条は通知カードや個人番号カードを不正に取得する行為を罰する規定になっています。


■第五十一条…人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(略)その他の個人番号を保有する者の管理を害する行為により、個人番号を取得した者は、三年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない。

 あまり説明の必要も無さそうですが、要は詐欺、暴行、脅迫、窃盗、不法侵入や不正アクセスなどの不法行為によって不当にマイナンバーを取得することを罰する規定です。悪質な手段での取得行為は不正競争防止法などでも違反規定がありますが、図利加害目的(不正な利益を得る目的、またはその情報の保有者に損害を加える目的)が構成要件になっています。
マイナンバー法では図利加害目的が要件に入っていないため、正当な理由なく取得するだけで罰せられてしまう可能性があるため注意が必要です。もっとも、例外もあります。例えば、企業が名簿業者に対して特定個人情報ファイルの売却をしようと画策していることを察知した従業員が、売却を阻止するため特定個人情報ファイルを自宅に持ち帰って保管した場合などは従業員の行為は緊急避難行為として罰せられることはありません。

・「個人番号」というのは49条の箇所でも書きましたが、マイナンバーそのものだけではなく、マイナンバーを一定の規則に従って変換したものなども含まれます。末尾に‘0’を付け加えたものや、マイナンバーの数字を『1⇒A』『2⇒B』『3⇒C』と言ったように変換したものなども含まれる表現になっています。

・「取得」というのは紙やDVD、USBメモリなどに記録された物を得ることだけに限らず、物に記録されていない口頭で聞き取る行為なども含められています。

・第2項の「前項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない」というのは、例えば他人のマイナンバーを騙して取得したのであれば詐欺罪が、通知カードや個人番号カードを盗み取ったのであれば窃盗罪も成立します(いずれも10年以下の懲役刑)。この51条はその性質上、詐欺罪や窃盗罪などと観念的競合(一つの行為で複数の罪を犯すことで、いずれの罪も成立するけれども法定刑の一番重い罰則が適用される)となり、51条の罰則規定があるからと言って詐欺罪や窃盗罪の罰則が適用されないわけではないということを確認的に第2項で規定しています。

・法定刑…3年以下の懲役又は150万円以下の罰金

■第五十二条…国の機関(略)の役員若しくは職員が、その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書、図画又は電磁的記録(略)を収集したときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第52条は行政機関の職員に対する罰則規定で民間企業の立場ではおよそ関係無いものになっています。民間企業で同様の行為が発生した場合は個人情報保護委員会が「勧告」を行い、改善が無ければ「命令」を行い、それでもなお違反する場合に罰則が適用される間接罰の仕組みがとられています(マイナンバー法第53条)

・「専らその職務の用以外の用に供する目的」というのは、仕事に関係無いのに、ということです。名簿業者への売却や単なる好奇心での収集などが対象になります。

・「収集」というのは集める意思を持って進んで集め取ることを言う用語で、自分が所持する状態に移すことを意味します。文書の閲覧や聞き取って記憶するだけでは収集には該当しません。これに対して「取得」は再現可能な状態で記憶する場合を含むので上記文書の閲覧等も該当します。つまり、「収集」は「取得」よりも狭い概念になっています。

・法定刑…2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

個人番号カード等の不正取得への罰則

■第五十五条…偽りその他不正の手段により通知カード又は個人番号カードの交付を受けた者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 通知カード、個人番号カードはどちらもマイナンバー制度における本人確認(番号確認)に用いられるものでなりすましにより不正に取得された場合は個人情報の漏えいや財産的な被害をもたらす危険があるため、本条でその不正取得を罰する規定が設けられています。

・「偽りその他不正の手段により通知カード又は個人番号カードの交付を受けた」というのは他人になりすまして通知カード又は個人番号カードを取得する場合や、通知カードや個人番号カードを紛失していないのに紛失したとウソをついて再交付を受けた場合などに本条が適用されます。他にも市区町村の職員が誤って他人の通知カードや個人番号カードを交付してしまい、誤りに気付きながらもカードを取得した場合などもこちらに該当します。また、通知カード・個人番号カードにはマイナンバーが記載されているため、「人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為」により不正にカードを取得した場合はマイナンバー法第51条にも抵触することになりえます。51条違反にならない場合としては、市区町村の担当職員を買収したり、甘言を弄したり、懇願したりして他人の通知カード・個人番号カードの交付を受ける行為は51条違反とはいえないため本条での罰則が適用されます。ちなみにこの場合の市区町村の職員が行った行為も当然違法行為であり共謀共同正犯(実行はしてないけれど犯罪に加担している)となり本条違反での処罰の対象になります。

・法定刑は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、住民基本台帳カードの不正取得が30万円以下の罰金刑だったので、より重い量刑になっています。